遺伝子治療の概要や歴史

遺伝子治療とは、遺伝子を治療するのではなく、遺伝子を用いて治療する方法のことを指します。遺伝子とは、生命現象の根幹にある、たんぱくを作る設計図のことです。遺伝子治療では、遺伝子の異常で発生する病気を遺伝子の正常な機能を補うことで治療したり、遺伝子を導入してさまざまな疾患に対しての治療効果を促したりします。ちなみに、最近注目されている遺伝子を直接改変するクリスパー・キャスナインなどによるゲノム編集とは、全く別の技術です。
遺伝子治療は、主に2つの方法に分けられます。1つは「In Vivo(インヴィボ)」で、遺伝子製剤を直接体の中に入れる治療法です。もう1つは「Ex Vivo(エクスヴィボ)」と呼ばれる方法で、細胞を外に取り出して、その細胞に遺伝子操作を加えてそれを体内に戻すという治療法です。
遺伝子治療の歴史は、1973年に人工的に遺伝子を組み替える、組み替えDNA技術を発明されたことに端を発しています。組み換えDNA技術とは、ある遺伝子を他の個体(他の種)に移動させる技術です。たとえば、味は良くないものの病気に強いという特徴を持つトマトから病気に強いという遺伝子を抜き取り、味は良いものの病気には弱いという特徴を持つトマトに移すことで、味が良く、しかも病気に強いトマトを作ることができます。この技術を医療に活かそうという研究が続けられ、1990年にアメリカで始めて遺伝子治療が始まりました。以降、遺伝子治療の技術は世界中に広まり、盛んに研究されています。現在ではパーキンソン病やある種の血友病、また、ガンなどの病気に、遺伝子治療が用いられています。